2006/08/27

最後は誰と働くか

仕事にもとめるものは、お金、やりがい、楽しさ、出世、自己実現と、個人によっていろいろありますね。でも、すべての出発点として、誰と働くかが、一番大切だと思います。 この人と仕事して楽しい、この人を育てたい、このチームで目標を達成したい。そんな単純な気持ち。今までは、特に意識しなかったけど、最近は特にそう考えるようになりました。

「ルビコンを渡る」という有名な言葉がありますね。これは、大きな意思決定をすることを、ローマのカエサルがルビコン川を渡ってローマを目指した意思決定に例えたものです。日本語なら、清水の舞台から飛び降りた・・・・・ってことになるのでしょう。

さて、こんな例えに使われるぐらいだから、どんなに大きい川なのかと思いきや、ルビコン川は、幅数mの小川なのですね。小川を飛び越えたぐらいで、大した意思決定ではなさそうですが、なぜ、比ゆに使われたのでしょう。

当時、ルビコンは、ローマと属州との、軍事境界線でした。執政官になって、改革をはじめたカエサルは、守旧派の危機感からガリアに左遷されます。そのとき書いたリアルタイムの日記が有名なガリア戦記です。ガリアとは、いまのフランス、ベルギー、スペイン北部、ドイツ西部をあわせた地域。まさに西ヨーロッパの2000年前のロマンが、感じ取れるこれまた名作品です。これについては、また別途、http://rome3155.blogspot.com で話します。

さて、左遷されたカエサルは、元老院の思惑とは逆に、卓越したリーダシップと戦略で、つぎつぎとガリアを平定します。カエサルの赴任期間が終わり、今の勢いでローマに凱旋されれば、いよいよ、元老院の解体だ・・・・と考えた元老院は、いろいろ難癖をつけて、「元老院最終勧告」をだします。つまり、カエサルに武装解除を命じたのです。この命令にそむけば、カエサルは反乱軍とみなされて、ポンペイウスのローマ正規軍と戦うことになります。ルビコンはその境界線だったわけです。

カエサルのとる道は2つあります。

(1) ルビコンを武装してわたり、ローマを敵にまわす。
(2) 武装解除して、殺されるか、ローマをすてて、属州に生きる。

だからこそ、大きな意思決定の例えとなるわけです。

結局カエサルは、ルビコンをわたります。そのとき、「行けばこの世の地獄、行かねばわが身の破滅・・・・犀は投げられた」と言ったのが、有名なシーンですね。改革派で、原理原則を貫くカエサルは、以前から元老院最終勧告の非合理性に反対していたし、元老院も、カエサルが従うとは読んでいなかった。ようは、カエサルが(1)を選択し、ポンペイウスがカエサルをたたく、根拠つくるわなだったわけです。

面白いのは、その原理原則をつらぬいて、ローマの未来のために、ルビコンをわたるカエサルが、部下に向かって、さきほどのせりふに続いて、

「私のために、戦かえ・・・・!!!」

と叫ぶのです。一見めちゃくちゃなこの呼びかけに、みんなは歓喜をあげそれについていきます。ロジカルなようで、感情的。感情的なようで、原理原則は貫く。カエサルの魅力ならではというところでしょうか。結局、カエサルは、ローマにもどり、改革をすすめ、帝国のフレームワークを作ります。最後は暗殺されてしまいますが、甥のオクタビアヌスが意思をつぎ、ローマは帝政、5賢帝、パクスロマーナで最盛期を迎えます。

世界史の教科書には、カエサルの鋭い戦略と、グランドデザインが、ローマ帝国を築いたとありますが、その出発点がルビコンだったわけですが、部下がカエサルとともに戦ったのは、ロジックや私的利害ではないのが面白いところです。おそらく、ガリア平定のなかで、傭兵や、属州の捕虜も含め、敵の文化をみとめ、敵をも許し味方として、真のローマ人たるために何をすべきかと考え続けるカエサルの姿勢があらゆる兵に浸透していたのでしょう。だからこそ、既得権のためにカエサルを排除する元老院の理不尽さに、カエサルとともに戦ったわけですね。きっと、カエサルと一緒に戦うことが誇りであり、楽しかったのはないでしょうか。

いま日本には、戦争はありません。また、だれか一人がリーダシップをとる世の中でもありません。自分の仕事と、ローマ帝国構築の壮大なロマンとはとても比べられません。しかし、同じ目標をもった人やグループが、ひとつのことを成し遂げようとするとき、

この人と働きたい・・・・この仲間とやると楽しい・・・・、この人を育てたい・・・・、

そんな単純な気持ちがもっとも大切であり、それをなくして、戦術も、目標も、目的も持ち得ない。それが真実だと思っています。

北岡豪史

P.S.
今回のエピソードは、私の大好きな、ローマ人の物語(15巻を15年かけてかいた塩野七生の本。現在14巻。文庫本だと3倍の量だが持ちやすくて安い)にの、4、5巻(文庫本では、8巻から13巻)のユリウス・カエサル(ルビコン以前、以後)に出ています。





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