2006/10/25

これは京都じゃない


美しい景観ですね。機会があって、アメリカ人の大金持ちが作った、アメリカのプライベート日本庭園を訪れました。一般に公開しているわけでもなく、オーナーが時々そこに泊まるとのこと。広大な敷地に、池、滝、茶室、ゲストルームもいくつもあって、まるで古の京都をそのままもってきたよう。それもそのはず、数百億と10年の歳月をかけて、日本から宮大工まで呼んで作った本物だそうです。桂離宮をそっくりそのまま再現したものまでありました。Made in 京都にこだわり、京都でまず作り、それを分解してアメリカに運び、再度組み立てたとか・・・でも、関心はしたものの感動はまったくなし。お金持ちのすることはわからんというのが正直な気持ち。違和感と失笑だけが残った訪問でした。

歴史とか伝統というのは、その国で生まれ、時間ををへて咀嚼され、言葉にはできなくとも人々の共通の意識のなかに根付いたものです。特に伝統的な暮らしをしていない私でさえ、いい器でお茶をのむと気持ちがほっとしたり、お茶碗によってごはんがおいしく感じたり、お刺身を食べる時しょうゆのための小皿を使ったりします。紅葉に四季を感じもみじ狩りに行きたくなるし、たたみに寝そべれば柱の木の香りに気持ちが和らぎます。

京都や奈良の1000年を経た風景は、日本人の普段の生活には現実的ではないけど、そこに、日本人としての原点を感じるからこそ、あんなにも人を魅了するのでしょう。普段はあまり意識しませんが、伝統や文化の原点をもっていることは、とても幸せなことです。たとえ、捨てるほどお金があったとしても、山奥にプライベート京都を作る必要なんてない。いつも心に、日本的、京都的なものがあるからです。

影響力のあるお金持ちのアメリカ人が、京都に魅せられたのはうれしいことですが、たとえ形だけ真似してもそれは模型。京都にはなりません。もっと別の形でお金を使って、日本の文化やよさを世界に伝えてほしいものです。

以前、フランスのお城で国際会議をやったとき(ヨーロッパの人はよくそうします)アメリカ人が何度も古城をうらやましがっていたのを思い出します。相対的に歴史が浅く、多民族国家ゆえに文化が多様なアメリカ人がお金で買えない京都、伝統、歴史、文化。我々はもっとそれを意識して、大切にすべきと思います。

北岡豪史@オレンジの街角(www.kitaoka.biz)
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2006/10/18

アメリカンジョーク恐るべし

今日はアメリカンジョークのお話。

NHKのTVで留学という番組を結構前から見ています。コロンビア大学の初級英語教育の講座の公開番組なので、英語教育番組というよりは、インターネット授業ライブという感覚でしょうか。毎回、アメリカの文化をテーマにしながら、英語の表現をブラッシュアップしていくのですが、昔から留学にあこがれてて、実現できなかった私には、海外の授業の雰囲気が感じられてとても興味深い番組です。放送時間に家にはいないので、HDレコーダーで録画して、暇なとき楽しんでます。

さて、過去の放送を見てたら「アメリカンジョーク」というのがありました。そうです、あのパーティ
ジョークというか、雑誌の片隅にふと書いてあるやつ。たぶん、ほとんどの日本人にとっては、何が面白いかよくわからないもの。それがテーマ。

内容を要約すると、

「アメリカンジョークには、いくつかの標準があり、それに従わなければならない・・・・」

例えば、「Knock Knock Joke」これは、ドア越しにノックする人(訪問者)と、ノックされる人と(その家の主)のやりとりを以下のようなフォーマットであつかうものです。

Knock, knock
Who's there? (相手の名前を尋ねる)
xxxxxx (first name を答える)
xxxxxx who?(family name を尋ねる)
名前にかけた駄洒落でおち・・・

例:

Knock Knock
Who's there?
Lettuce (野菜のレタス)
Lettuce who? (レタスが名前なら、苗字は?の意)
Let us come in.( Let us (レッタスの発音)で、lettuce とかけてる)

うーん、なるほど。まあこれをみて、笑いも標準化するところあたり、さすがアメリカ人ですね。他にもいくつか標準があり、それに従うと、アメリカの文化を理解し、英語表現が豊かになる・・・・・とのことです。

どこ国にも、笑いのフォーマットは存在しますが、日本とアメリカを比べると、アメリカンジョークの制約の方が圧倒的に強い。このことは、笑いにかぎらず、いろんな分野でみられます。

例えば、トヨタのかんばん方式は、現場が自発的に考え、創意工夫をして、需要に基づいた最適な生産をする方式ですが、アメリカ人は、それをサプライチェーンマネジメントとか、リーン生産方式として標準化し、システム化します。アメリカでは、水道の蛇口の大きさは200年前に標準化されてるそうですが(本当かな)、日本の蛇口はいまだに多種多様。東急ハンズが儲かるわけです。仕事は、いまだに上司の背中をみて・・・・という日本人も多いけど、アメリカではすぐ方法論とジョブディスクリプション。「お客様は神様です!」なんて、昔から三波春夫も言ってるのに、今更ながらCRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)とかレスポンス経営(顧客の要求にすばやく応える)の重要性が説かれている。

これはある意味、アメリカのいいところでもあり、かわいそうなところでもあります。多民族国家で、宗教、人種、歴史感、国家感が、日本に比べると多種多様であり、わかっていることもドキュメントして方法論化し、声に出して主張しないと、コミュニケーションがとれません。バックグラウンドが違うので、規格外の笑いは、タブーに触れるリスクがあるわけです。

でもおもしろくないなぁ。グローバライゼーションの進展の中、政治、金融、IT・・・と次から次へと標準化が取り入れられるけど、ほとんどが、アメリカンスタンダード。標準化が得意なのはわかるけど、力でねじ伏せれば、反発がでるのは、イラクを見ればわかります。

では、日本人として何をしたらいいのか?

・ 標準化のいいところはどんどん取り入れればいい。
・ やみくもに反発しててもはじまらない。
・ だからといって、日本人のよさを捨ててはいけない。
・ まじめさ、責任感、チームワーク、阿吽の呼吸はむしろ生かすべき。
・ そういう日本人の考えを言葉にして世界に向けて発信する。

玉虫色だけどこれしかないのかと思う。ロングテールの時代には、このことが、政治家や大企業の経営者ではなく、個人の役割になってきます。ひとりひとりが、友人を通じ、仕事を通じ、ブログを通じて、日本人の考えを、草の根で発信することがとても大切だと思います。

アメリカンジョーク恐るべし。でも、アメリカ人にしてみれば、笑いさえも標準化せざるを得ない事情があるからやっているだけのこと。コンプレックスをもつ必要なんてありません。いいところは取り入れながら、日本の強みは何かを考えていきたい。標準化されていなくたって、笑えるよろこび。そこに日本の生きるヒントがあると思います。

最後に、欧州赴任時の同時通訳の友人Mさん(最近完全帰国)がすすめてくれた、日本的精神の可能性。赴任時やグローバルプロジェクトで悩んできたことに、解決のヒントを与えてくれました。

<参考>日本的精神の可能性

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2006/10/12

とにかく、はじめよう

知人のサイトで、「明日やろうは、ばかやろう!」というコメントをみて、その本質をついたセンスに、思わず笑ってしまいました。でもこれってやっぱり真実の気がします。

何かを始めるとき、2つのスタイルがありますね。

(1)まずはじめて、状況に応じて考える
(2)万全の準備をして、慎重に検討をかさねて、はじめる。

どちらがいいか悪いかは別として、経験的に(1)の方が得られる結果がよくなるのではないかと思うのです。

例1

システムコンサルティングの仕事をしていて、お客様のシステムをいつ稼動開始するのかは、重要な決定事項です。契約履行をするためのコミットメントですからね。例えば、約束している納期が、3ヶ月後に迫っているのに、約束したシステムの100%を稼動させるのが無理になったとします(理由はいろいろですが)このとき、

(1)のパターン
  まず、50%でも稼動して、徐々に100%にしていく。

(2)のパターン
  100%なるまで、稼動開始日を遅らせる。

私のつたない経験で2つのパターンを比べると、当初稼動開始日から1年たったとき、システムの出来、ユーザの満足度、予定した効果の具現化、どれをとっても(1)の場合のほうが結果が明らかにいいのです。

例2

宇宙技術の結晶として、月面着陸を目指したある国で・・・・・

 (1)のパターン
  冷戦化のアメリカ。ソ連への対抗意識、軍事技術向上、国威発揚のため、ケネディがとにかく月へ行くと宣言する。(アポロ計画)

 (2)のパターン
  日本。現状の技術と、予算規模なら、まずは実験が無難。次に無人飛行。安定化を得て、有人飛行にチャレンジとのロードマップを出す。

結果として、(1)のアメリカはは、月へ行ったけど、(2)の日本は、アポロ計画から30年たっても、有人飛行すらままならない。約束は必ず実行する(予算はオーバーしないように守る)ことは重要ですが、そのために目標をさげては、本末転倒な気がしませんか。

もっとも、システムの話だって、遅れる事情は様々だ!とか、アポロだって、その時代の雰囲気に支えられたからこそで、日本とは事情は違う!など反論はあるでしょうが、あくまでも原則論の話なので、そこは、あまり突っ込まないでくださいね。

そんなわけで、例を挙げればきりがないのですが、人間というのは、先延ばしするとどこまでもずるずる行ってしまう。一方、やると決めるとそれなりに力と英知が結集されていって何とかしてしまう。そんな不思議な力があるような気がします。

人それぞれやりたい事はたくさんあります。やらなければいけない事もたくさんあります。でも、人生は短い、光陰矢のごとし。Time flies です。みなさんのライフスタイルに、まず初めて、そして走りながら考えるアプローチを、ちょっとだけ取り入れてみてはいかがでしょうか。

ただし、やみくもに手を出して途中でやめては意味がありません。けじめがつくまで継続する勇気は必要です。また、やろうとする事ことが思いつきではなく、自分の夢、原理原則、世の中のため、大切な約束など、命をかけて取り組む価値があるかどうかは、ちゃんと見極めなけばなりません。

北岡豪史@オレンジの街角(www.kitaoka.biz)
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