美しい景観ですね。機会があって、アメリカ人の大金持ちが作った、アメリカのプライベート日本庭園を訪れました。一般に公開しているわけでもなく、オーナーが時々そこに泊まるとのこと。広大な敷地に、池、滝、茶室、ゲストルームもいくつもあって、まるで古の京都をそのままもってきたよう。それもそのはず、数百億と10年の歳月をかけて、日本から宮大工まで呼んで作った本物だそうです。桂離宮をそっくりそのまま再現したものまでありました。Made in 京都にこだわり、京都でまず作り、それを分解してアメリカに運び、再度組み立てたとか・・・でも、関心はしたものの感動はまったくなし。お金持ちのすることはわからんというのが正直な気持ち。違和感と失笑だけが残った訪問でした。
歴史とか伝統というのは、その国で生まれ、時間ををへて咀嚼され、言葉にはできなくとも人々の共通の意識のなかに根付いたものです。特に伝統的な暮らしをしていない私でさえ、いい器でお茶をのむと気持ちがほっとしたり、お茶碗によってごはんがおいしく感じたり、お刺身を食べる時しょうゆのための小皿を使ったりします。紅葉に四季を感じもみじ狩りに行きたくなるし、たたみに寝そべれば柱の木の香りに気持ちが和らぎます。
京都や奈良の1000年を経た風景は、日本人の普段の生活には現実的ではないけど、そこに、日本人としての原点を感じるからこそ、あんなにも人を魅了するのでしょう。普段はあまり意識しませんが、伝統や文化の原点をもっていることは、とても幸せなことです。たとえ、捨てるほどお金があったとしても、山奥にプライベート京都を作る必要なんてない。いつも心に、日本的、京都的なものがあるからです。
影響力のあるお金持ちのアメリカ人が、京都に魅せられたのはうれしいことですが、たとえ形だけ真似してもそれは模型。京都にはなりません。もっと別の形でお金を使って、日本の文化やよさを世界に伝えてほしいものです。
以前、フランスのお城で国際会議をやったとき(ヨーロッパの人はよくそうします)アメリカ人が何度も古城をうらやましがっていたのを思い出します。相対的に歴史が浅く、多民族国家ゆえに文化が多様なアメリカ人がお金で買えない京都、伝統、歴史、文化。我々はもっとそれを意識して、大切にすべきと思います。
北岡豪史@オレンジの街角(www.kitaoka.biz)

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